【解説】柏文(かしわもん)とは?日本伝統文様にある柏(かしわ)を徹底解剖!

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柏文 – かしわもん –

柏(かしわ)の大きな葉は、古代より神の供物を盛るための器(うつわ)として神事にも用いられるなど、身近な植物でした。

剛毅な気質を象徴的に表した柏文(かしわもん)は、春の新芽が出るまで葉を落とさないことから「代が途切れない、家が続く」として公家、武家に愛され、信仰的な意味と子孫繁栄の願いから家紋として用いられるようになったそうです。

そんな神々しく武将たちも愛された柏(かしわ)をデザインした柏文(かしわもん)をご紹介致します!

 

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柏(かしわ)とは?

kashiwa-leaf02柏(かしわ)は、北海道から九州まで日本各地の山野に自生するブナ目ブナ科の落葉高木(らくようこうぼく)です。比較的寒冷な土地に多く、かつては北海道の十勝平野に大木が群生していた様です。アジア大陸東北部、朝鮮半島、南樺太や南千島にも自生し、さらに内陸だけでなく火山地帯や海沿いにも自生しているそうです。
柏(かしわ)は、寒暖の差がある場所でも成長できる丈夫な樹木の為、北海道では家屋や農地を守る防風林として植樹されています。

柏(かしわ)の葉の葉縁が波状になっている所が特徴です。葉の長さの平均は7~15センチほどで形状は楕円形、ブナ科の仲間では最大となります。葉の大きさは最大でなんと長さ30センチを越すものもあります。枝から互い違いに生じるが枝先に集まっては陰を作るため、生き物にとって格好の隠れ家となり、夏にはカエルやセミなどがよく集まります。因みに、柏(かしわ)の葉柄や葉裏にはびっしりと短毛があります。

柏(かしわ)の開花は5~6月頃で、桜の花が終わったころにクヌギやコナラと似た花を咲かせます。雄花の花序(花の集り)は黄緑色をした紐状で、長さは10~15センチほどです。その年に伸びた枝の下部から垂れ下がります。雌花は新枝の上部にある葉の脇に5~6個咲き、雌花の後にはクヌギに似た可愛らしいドングリが実ります。

柏(かしわ)の用途

柏(かしわ)は、私たちの生活の中で様々な活躍をしています。

柏(かしわ)の木

柏(かしわ)の木材のまわりは黄褐色で、中ほどは暗赤褐色をしています。
柏(かしわ)の木は「Daimyo oak」とも呼ばれ、オーク材として建築や家具材に使われています。
重くて硬いので、土台や線路の枕木・炭材、キノコ(イタケ、ナメコ、クリタケなど)の原木などに利用されるケースが多いそうです。
珍しい例ではワインやウィスキーなどの樽材として用いられることもあります。

柏(かしわ)の葉

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柏(かしわ)の葉は現代の幅広い方々に認知されている植物の1つでもあります。
葉を見るだけで、その名が分かる樹木はそう多くありません。
でも、この波打つような葉の形を見れば、日本人の誰もがすぐに「柏(かしわ)」を思い出すでしょう。
それほど、私たちの身近な葉という事ですよね。

端午の節句と柏餅

柏餅は、柏(かしわ)の木の葉で巻いて作るので柏餅と呼ばれます。
昔は柏(かしわ)の新葉を柏餅に使っていたようですが、現代では一部地域を除き、前年の初夏に収穫して乾燥保存していた葉、あるいは韓国や中国からの輸入した塩漬けの葉を柔らかく煮た物を使っています。
日本では、柏餅を包む葉用に柏(かしわ)の木が栽培されていますが、国産の柏の木は生産量が少なく、柏餅用の葉は中国や韓国産のものが多くなってきているのが現状です。柏(かしわ)の木には多くの葉がつきますが、形が歪なものや虫食いもあり、菓子用に使う形の整ったものは少なく、1本の木から綺麗な形の葉が数枚しか収穫できないこともあるそうです。
さらに柏(かしわ)は東日本に多く、西日本に少ないため地方によっては端午の節句に柏(かしわ)ではなくサルトリイバラの葉を使った「五郎四郎餅」を用いるエリアもあるそうです。

そんな柏餅を食べる日、それは「端午の節句」の日ですよね。

5月5日は徳川幕府が定めた五節句の内のひとつ「端午の節句」の日です。
現代の祝日法では「こどもの日」に制定され国民の祝日となっています。

柏(かしわ)の葉を用いた柏餅のルーツは、徳川九代将軍家重から十代将軍家治の頃、江戸で生まれたと言われているようです。江戸で生まれた「端午の節句」に柏餅を供えるという文化は、参勤交代で日本全国に行き渡ったと考えられています。

現在の「端午の節句」には、関東では柏餅、関西では粽(ちまき)を食べるのが主流とされています。中国から端午の節句とともに粽が伝来したのは平安時代です。先ほど述べた様に、端午の節句が五節句のひとつになった江戸時代に柏餅を食べることが江戸の主流となり、伝統を重んじる上方では粽を伝承したといわれています。

粽は、中国楚の時代に活躍した、詩人で政治家でもある屈原(くつげん)の供養がルーツにあります。中国の武人の屈原は、国を発展させ国王の信頼を勝ち取り、多くの国民からも支持されていました。しかし、この事を嫉んだ者に仕組まれ、泪羅(べきら)という川で命を落としたのが五月五日でした。屈原の死を悲しんだ人々が、命日に供物のもち米を水面に投じて供養したのが、粽(ちまき)のはじまりだといわれています。供物が屈原に届く前に龍に盗まれないように、龍が苦手な笹の葉で包み、邪気を払う五色(赤・青・黄・白・黒)の糸で縛って川へ投げたことから、五月五日に粽(ちまき)を作り、厄除けを願う風習が日本にも伝わったようです。

神聖な器

大人の手ほどの大きさがある柏(かしわ)の葉は、古代から食べ物の器として用いられてきました。また、葉に含まれる成分(オイゲノール)には殺菌効果もあることから、植物の保存にも重宝されました。神事の際には、神に捧げる御食(みけ)の器としても使われる、神聖な植物のひとつです。

かしわ茶

柏(かしわ)の葉には、緑茶などと同じく、カテキンやタンニンが多く含まれていることから、「かしわ茶」に利用されている。

柏(かしわ)の樹皮

若木の幹はつるりとして溝はありませんが、成長するごとに樹皮に亀裂が入り縦に無数の溝ができます。樹皮の色は灰褐色や黒褐色で、カシワの樹皮は分厚いのが特徴。幹は成長すると太さが60cm、高さが15m~20mになるため、冬に葉をつけたままの姿はほかの樹木の中にあっても目立ちます。

柏(かしわ)の樹皮には最高級のタンニンが含まれ、漁業網や皮なめしの染料として使われてきました。

  • 黒褐色で厚く、縦に不規則に割れる。カシワの樹皮から採れるタンニンは最高級品で、北洋漁業の網の染色や皮なめし(軍靴、軍装の皮製品製造など)に大量に使われた。
  • 厚いコルク質の樹皮があるので、山火事の後にも生き残り純林をつくることがある。

柏(かしわ)の木の実のどんぐり

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柏(かしわ)の果実は丸い形のどんぐりで、皮はとても堅くつやがあります。
柏(かしわ)のどんぐりはたくさんの突起がついた帽子のようなものをかぶっていますが、帽子の突起は葉の変形したもので「苞片(ほうへん)」と呼ばれ、帽子のことを「殻斗(かくと)」と言います。
殻斗は果実全体に栄養を送る役目を果たしています。

柏(かしわ)のどんぐりに似ているのが、クヌギのどんぐりです。
どんぐりはおしりの側が丸く、もう片方は尖って先端に小さな突起がでています。
この小さな突起は雌しべの残りで、柏(かしわ)とクヌギはこの突起の長さでそれぞれを見分けます。

  • カシワ…雌しべの残りが細く長く伸びている。
  • クヌギ…雌しべの残りに長さはなく、どんぐりの先端に小さくついているだけ。

柏(かしわ)の意味

柏(かしわ)の英名は、「Japanese Emperor Oak」=日本の皇帝のオークです。
日本という名前が付いたオーク(ブナ科樹木)、しかも皇帝の木なのですから、いかに重要な植物だと考えられていたかが分かります。

更に、漢字の「柏」と「槲」どちらも訓読みが「かしわ」になり、実は「柏」も「槲」も柏(かしわ)の木の和名になっています。
しかし「柏」はヒノキ科の常緑樹を総称し、「槲」はブナ科の落葉高木を総称する意味もあります。

柏(かしわ)の漢字

柏(かしわ)という名前は、①「炊葉(かしきは)」あるいは「食敷葉(かしわ)に由来し、食物を包んだり、食物の下に敷いたことにちなむ、②葉が堅いことから「堅し葉」に由来する、といった説があるそうです。
漢字表記は「檞」あるいは「槲」が正しく、誤用されがちな「柏」は本来、全く別物の側柏(このでかしわ)を表すようです。

柏(かしわ)の縁起

枯れた葉をつけたまま越冬し、春に新葉と入れ替わることから、絶えず世代を継いでいく「家運隆盛」を象徴する樹木とされています。また、一年中葉をつけたままの姿が「葉を守っている」ようにみられ、「葉守りの神」が宿るという言い伝えもあります。

源氏物語や枕草子と柏

源氏物語や枕草子には「かしは木は、はもりの神」と出てきており、これは秋になると葉を守る神が木に宿るという事を指しているみたいです。そのため柏(かしわ)の木は神聖視され、神職の家紋などによくこの葉の模様が使われた。

ヨーロッパと柏

ローマにも神の宿る木としてジュピターの祭壇にヨーロッパガシワの枝を捧げる風習があるそうです。



柏文(かしわもん)について

柏(かしわ)の葉を描いた柏紋(かしわもん)は、神官や武家に好まれ、十大家紋のひとつにも数えられています。
伊勢神宮、熱田神宮、吉備津神宮、宗像神宮の大宮司家をはじめ、多くの神職の家紋となったみたいです。
代表的な一族では、熱田神宮の大宮司を務めた千秋氏、伊勢神宮に仕えた久志本氏のほか、山内一豊で有名な山内家などが、この柏紋(かしわもん)を使いました。
柏(かしわ)の幹はコルク質で耐火力があるため、山火事になっても生き残るとも言われている。これも柏(かしわ)の縁起の良さを語るのに一役買っており、家紋として柏紋(かしわもん)を使うケースも多いだとか、ないとか。

文様の意味:商売繁盛、子孫繁栄

上記でもお伝えいたしました様に、柏(かしわ)は新芽が出てから古い葉が落ちることから、「葉守りの神が宿る神聖な木」とされてきたようです。
また、春の新芽が出るまで葉を落とさないことから「代が途切れない、家が続く」として公家、武家に愛され、信仰的な意味と子孫繁栄の願い、剛毅な気質を象徴的に表したところから家紋として用いられるようになったそうです。

早速、いくつか代表的な柏文(かしわもん)をご紹介します。

 

三つ柏(みつかしわ)

mitsukashiwa家紋:三つ柏(みつかしわ)
参考:発光大王堂

七福神の1つである恵比寿様を祀る西宮神社、恵比寿神社の神紋でもあります。
三つ柏紋は、幅の広い3枚の柏(かしわ)の葉を広げるように描くシンプルな文様です。

抱き柏(だきかしわ)

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家紋:抱き柏(だきかしわ)
参考:発光大王堂

2枚の柏(かしわ)の葉を左右から抱くように合せて描くのが抱き柏(だきかしわ)です。

丸に三つ柏(まるにみつかしわ)

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家紋:丸に三つ柏(まるにみつかしわ)
参考:発光大王堂

三つ柏紋の周りを丸で囲う紋が丸に柏紋です。柏紋(かしわもん)の中でも最も多く使用されているポピュラーな家紋で全体の8割を占めているそうです。

丸に土佐柏(まるにとさかしわ)

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家紋:丸に土佐柏(まるにとさかしわ)
参考:家紋のいろは

山内一豊で有名な山内家の家紋でも使用されている丸に土佐柏(まるにとさかしわ)です。
細い三つ柏の周りを丸で囲う紋様です。

この丸に土佐柏(まるにとさかしわ)は、一豊の父が戦の途中で鎧の背にさしていた目印の小旗が失われたため、代わりに近くにあった柏の枝をさして戦ったところ、勝利したという伝承に由来するそうです。
ちなみに、三菱グループの「スリーダイヤ」は、「丸に土佐柏(まるにとさかしわ)」に由来するみたいです。創業者・岩崎弥太郎氏が土佐出身で、藩主である山内家の家紋をデザイン化したと考えられているそうです。



柏文(かしわもん)が使用されたデザイン

柏文(かしわもん)が使用されたデザインを浮世絵でご紹介致します。

鳥居清長 「出語り図・三枡の梅川と幸四郎の忠兵衛」
鳥居清長 「出語り図・三枡の梅川と幸四郎の忠兵衛」
パブリックドメインQ:著作権フリー画像素材集

楊洲周延 「二十四孝見立画合 第二十二号 呉猛」 (1890)
楊洲周延 「二十四孝見立画合 第二十二号 呉猛」 (1890)
パブリックドメインQ:著作権フリー画像素材集

 

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※2024/05/03(金)更新※



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