【解説】沢瀉文(おもだかもん)とは?日本伝統文様にある沢瀉(おもだか)を徹底解剖!

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沢瀉文 – おもだかもん –

「木瓜」や「藤」「梅」などは、古くから特権階級の間で衣服や調度品、建屋の内装などに用いられた文様を家紋のルーツとした文は多いです。
今回ご紹介する沢瀉文(おもだかもん)もそんな文様の一つで、すでに奈良時代には用いられていたようです。

沢瀉(おもだか)は夏から秋にかけて、3弁の白い可憐な花をつける植物ですが、初夏を彩る代表的な文様の一つとして、親しまれていたようです。
実際、沢瀉(おもだか)がなぜ初夏を代表する文様になった理由は定かではないそうです。。。

そして沢瀉(おもだか)がそのような文様の一種から、紋章のような使用がされた一例として、平安時代には村上源氏の総本家で清華家の家柄である久我(こが)家が所有する牛車につけたことが記録に残っています。

さらに、沢瀉紋(おもだかもん)は縁起がいい事から、有名戦国大名・武将たちがこぞって家紋に掲げてきました。

そんな昔から愛されてきた沢瀉文(おもだかもん)をご紹介致します!

 

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沢瀉(おもだか)とは?

omodaka-mon-torazou沢瀉(おもだか)とは、オモダカ科オモダカ属の多年生の水生植物です。
水生植物のため、湿地や沼、ため池、そして水田に発生します。ある程度、生長が進行すると特徴的な葉をつけます。その葉は形(やじり)で、30〜60センチの長い柄を持ちます。夏から秋、高さ40〜70センチの花茎を伸ばし、白色の3弁花を輪生(りんせい)します。

その特徴的な葉と、白く可憐な花を咲かせることで、観賞用に用いられることもあります。
しかし、稲作が身近であった昔の日本人にとって、沢瀉(おもだか)は、一年生ではなく多年生でかつ水田にも発生する植物であるため、除草剤の効きが悪く厄介な「雑草」という感覚だったのです。

それ故、この沢瀉(おもだか)は、他の多年生雑草の同様、種子だけでなく地下茎が発達した「塊茎(かいけい)」からも発芽するため、仮に種子を作れずに地上部が消失したとしても、翌年には、地下から新たな地上部が発生してしまいます。
根強いですね^^!
そのため、草取りなどのような方法では沢瀉(おもだか)は根絶が難しく、「しぶとい」という印象を与えることが多いのです。

odaka-mon-とらぞう京野菜やおせち料理に用いられる「くわい」は、この沢瀉(おもだか)の中でも栽培用の品種の「塊茎(かいけい)」の部分です。塊茎(かいけい)は分かりやすく言うと「じゃがいも」や「こんにゃくいも」などの事です。

沢瀉(おもだか)の丸い塊茎(かいけい)の部分から芽が伸びている姿から「芽(目)が出る」縁起物の食材として今でも親しまれ、おせち料理に欠かせない野菜ですよね。



沢瀉文(おもだかもん)について

omodaka-mon-torazou家紋:丸に立ち沢瀉(まるにたちおもだか)
参考:フリー素材サイト発光大王堂

丸に立ち沢瀉(まるにたちおもだか)は沢瀉文(おもだかもん)の一種で、沢瀉文(おもだかもん)は十大紋の1つに数えらるほど普及し、現代でも使用家系の多く大変ポピュラーな紋属となります。

沢瀉文(おもだかもん)は、沢瀉(おもだか)をモチーフに図案化された、植物紋の一種です。

沢瀉(おもだか)の葉はかなり特徴的な形をしていて、その葉の形状が矢の矢尻の部分に似ていることから、「勝い草(かちいくさ)」という別名で呼ばれ、武士階級を中心に縁起物とされました。

さらに上記でも記載したように、伝統的な食材として用いられてきた「くわい」が「芽(目)が出る」という姿から縁起物の野菜として扱われていた事や、取り除こうにも中々根絶できないその「しぶとさ」といった特徴に縁起をかついだ武家の一部がこの沢瀉紋(おもだかもん)を家紋として取り入れ始めたようです。

沢瀉文(おもだかもん)を掲げる有名戦国大名・武将

豊臣秀次(とよとみ ひでつぐ)と抱き沢潟(だきおもだか)

抱き沢瀉文-dakiomodakamon-torazou

家紋:抱き沢潟(だきおもだか)
参考:フリー素材サイト発光大王堂

豊臣秀次(とよとみ ひでつぐ)は、豊臣秀吉(とよとみ ひでよし)の甥で、秀吉の養子となり、ついで関白となっています。
豊臣 秀頼(とよとみ ひでより)の誕生後は秀吉との関係が悪化し、文禄4年(1595)に高野山へ追放された後に切腹したとされています。

そんな豊臣秀次(とよとみ ひでつぐ)は、旗印(はたじるし)または馬印(うまじるし)に沢瀉紋(おもだかもん)用いていたようです。
種類は抱き沢潟(だきおもだか)です。

因みに豊臣秀吉(とよとみ ひでよし)は「木下藤吉郎(きのした とうきちろう)」と名乗っていた頃に、織田信長(おだ のぶなが)から五三の桐紋(ごさんのきり)を下賜(かし)されるまでは、「沢瀉文」(おもだかもん)を使っていたようです。
理由としては、秀吉の正妻であるねねが、過去に養女となっていた浅野氏との関連が考えられるみたいです。

福島正則(ふくしま まさのり)と福島沢瀉(ふくしまおもだか)

福島沢瀉文-fukushimaomodakamon-torazou

家紋:福島沢瀉(ふくしまおもだか)
参考:フリー素材サイト発光大王堂

福島正則(ふくしま まさのり)は、豊臣秀吉(とよとみ ひでよし)の家臣で勇猛果敢な「武断派」の武将でした。
賤ヶ岳の戦い(しずがたけのたたかい)、小田原の役、朝鮮出兵、関ヶ原の戦いで武功を挙げ、51万石の大名になったようです。
「武勇に長けるが、大酒吞みで智謀(ちぼう)に乏しい猪武者」とも呼ばれていたようですね。。。

秀吉が沢瀉紋(おもだかもん)を与えた武将のうち、福島正則(ふくしま まさのり)が、最後まで愛用していたことに由来し、彼の名前の一部を取って「福島沢瀉文」(ふくしまおもだかもん)とも呼ばれています。

毛利元就(もうり もとなり)と長門沢瀉(ながとおもだか)

長門沢瀉文-nagatoomonagamon-torazou

家紋:長門沢瀉(ながとおもだか)
参考:家紋のいろは

小規模国人領主の立場から、一代で中国地方8カ国の支配を確立したことで有名な毛利元就(もうりもとなり)は、「勝い草(かちいくさ)」という別名を持つ沢瀉(おもだか)に、「勝ち虫(かちむし)」とされる蜻蛉(とんぼ)が止まったことで配下の士気を鼓舞し、実際に戦に勝利したことに因み、家紋を沢瀉文(おもだかもん)を使用するようになった(裏文としてらしいですが)と伝えられています。
種類は長門沢瀉(ながとおもだか)です。

ちなみに蜻蛉(とんぼ)が「勝ち虫(かちむし)」とされる由来は、決して後ろに飛行することのないその習性から「不退転(退くに転ぜず、決して退却をしない)」に通じるとされたという、これも一種の縁起担ぎです。

沢瀉文(おもだかもん)の歴史

沢瀉文(おもだかもん)はその家紋としての縁起のいい意味合いから広く武家にも重用されてきました。
奈良時代から文様の一種として親しまれていた沢瀉紋(おもだかもん)ですが、平安末期の源平騒乱の時代には、武士の直垂(ひだたれ)に沢瀉文様(おもだかもん)を用いたものが記録に残っています。

また、源氏鎧の縅(おどし)の部分に数種類の色違いの糸を用いて沢瀉(おもだか)の図柄を表現した、沢瀉縅(おもだかおどし)と呼ばれる大鎧を源氏方の武将が用いているように、沢瀉紋は徐々に武家の用いる文様の一つとして定着していきます。

そして単なる文様としてではなく、家を表す紋章としての沢瀉紋(おもだかもん)を用いた武将の例が、室町中期に記録として残っています。

戦国乱世の時代には大小様々な武家勢力の台頭により、大規模な合戦が頻発し始めると、その家を表す紋章の重要性は、ますます高まってきます。その理由もやはり、その縁起のいい意味合いから沢瀉紋(おもだかもん)を用いる武家がいくつか登場していきます。
上記でも紹介していますね^^

このように尚武的な意味合いで、鷹の羽紋(たかのはもん)や剣片喰紋(けんかたばみもん)と並び、この沢瀉紋(おもだかもん)も大小問わず様々な武家に家紋として用いられた様です。

江戸幕府が成立し、泰平の世が訪れると、特権階級だけでなく一般階級にも爆発的に家紋が普及します。一般庶民には名字の公称が認められなかったため、家の区別をつけるために家紋を利用しようとしたのです。
そのため、どの家にも家紋を定める必要性が生じたという訳です。しかしそのような背景から決められた家紋ですから、この時代に家紋を定めた家は、大抵の場合、その由来に特別な意味合いがあるわけではなさそうですね。。。



沢瀉文(おもだかもん)が使用されたデザイン

沢瀉(おもだか)のデザインは、湿地帯に自生することから、沢瀉(おもだか)単体よりも、流水との組み合わせが多く見られます。
独特の細長い葉にラインを入れて葉脈を強調し、図案によっては藤や桐の花のような小花と共に配されているものもあります。

現在でも主に夏用の着物(友禅染など)や帯などに用いられます。

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参考:ビバ!江戸

 

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※2022/3/19(日)更新※



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