【解説】勝見文(かつみもん)とは?日本伝統文様にある勝見(かつみ)を徹底解剖!

勝見文タイトル trivia
勝見文 – かつみもん –

勝見(かつみ)は、別名「花かつみ」とも呼ばれており、眞菰(まこも)の古名でイネ科の多年草です。
葦(あし)などとともに水辺に普通に見られ群生しており、葉は長くて幅は広いです。
初秋になると上方に雌花穂(しかすい)、下方に雄花穂(ゆうかすい)を円錐状につけます。
茎や葉で茣蓙(ござ)を編み、種子と若芽は食用とされてきました。

勝見(かつみ)文様とは、眞菰(まこも)の葉や花穂(かすい)などを図案化したものです。

そんな勝見文(かつみもん)をご紹介致します!

 

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勝見(かつみ)とは?

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勝見(かつみ)は、東南アジアや東アジアに分布し、水辺に群生するイネ科の多年草で、大きいもので1~2メートル程まで成長し、日本では全国の川や湖の水辺で見ることができます。
学名は「Zizania latifolia」、英名は「Manchurian wild rice」です。

勝見(かつみ)は、神が宿る草

勝見(かつみ)は、古来より「万葉集」や「古事記」に登場し、「神が宿る草」といわれ、 各地の神社で御神体や霊草として、大切に使われてきました。
出雲大社では、勝見(かつみ)で締め飾りを編み、神田明神などでは、勝見(かつみ)で編んだ茅の輪をくぐる夏越の祓が行われます。
また、お釈迦様は勝見(かつみ)で菰(むしろ)を編み病人の治療をしたともいわれています。
菰(むしろ)は、現代では稲わらで編むことが 一般的ですが、勝見(かつみ)で編む菰(むしろ)が「真の菰(むしろ)」であることから、 別名でもある「真菰(まこも)」といわれる由縁みたいです。
勝見(かつみ)を栽培すると、その土と水を浄化してくれるそうです。

勝見(かつみ)の効果・効能

そんな神聖な植物の勝見(かつみ)は、1億年前には、今の形で自生し、 紫黒色の実をみのらせ、かつては六穀の一つと言われていました。
ネイティブアメリカンは、アメリカマコモを「ワイルドライス」として今も食べているそうです。

勝見(かつみ)は、葉も茎も栄養満点で、ビタミンや葉酸が多く含まれているのは葉の方です。

勝見(かつみ)の効果・効能については、古く中国で書かれた薬草書「本草綱目(ほんぞうこうもく)」に、「五臓(心臓・肺臓・肝臓・脾臓・腎臓)の邪氣を利し、毒を消す」と記されていますが、現代医学が発達してから現状は研究途中だそうです。
勝見(かつみ)は、神経細胞調節作用や抗酸化作用、骨粗しょう症予防、肝癌や大腸がんのリスクを低下させる効果も報告されており、スーパーフードとして期待が高まっています。
勝見(かつみ)には、普段の食事では不足しがちな多くの栄養が含まれています。
勝見(かつみ)に含まれる多くの栄養により、身体全体の不調に効果的な効能があると考えられています。

腸内善玉菌を増やして腸内環境を改善

勝見(かつみ)には、善玉菌(乳酸菌、ビフィズス菌など)が活動しやすい環境をつくる手助けをしてくれる成分が多く含まれています。
その善玉菌が腸まで届くと、腸の活動を活性化してくれます。

血圧の上昇を抑制

勝見(かつみ)は、食物繊維が豊富なため、腸内のナトリウムを取り込むことで、血圧上昇を抑制する効果が期待できます。

バリア力や抵抗力を高める

勝見(かつみ)には、身体の中に溜まった毒素などを洗い流し、汚れた血液を浄化して、体内に溜まった老廃物のデトックスをしてくれる働きがあります。
勝見(かつみ)を摂取すると体内の毒素を身体の外へ排出するホルモン(副腎皮質ホルモン)の分泌が促進されるといわれています。免疫力アップのほかにも、ウイルス感染を予防する効果なども期待されています。

別名:花かつみ

勝見(かつみ)は、別名「花かつみ」とも言われています。

実は、「花かつみ」という花は、実際に存在する花ではないようです。
この「花かつみ」という言葉が最初に現れるのは、「万葉集」の中臣女郎(なかおみのいらつめ)が大伴家持に贈った詩だそうです。

おみなへし 咲沢に生ふる 花勝美 かつても知らぬ 恋もするかも

更に、「古今和歌集」の巻十四の巻頭には…

みちのくの あさかの沼の 花かつみ かつみる人に 恋やわたらん

という歌がありこの歌があまりにも素敵であった為、それ以降この歌を本歌取りした歌が多く詠まれたそうです。
「花かつみ」はそれらの歌の中では、都から遥かに遠い幻想のみちのく安積沼(あさかぬま)にのみ咲く花として詠まれてきたそうです。
要は、空想上の花ですね。

そして江戸時代に、「花かつみ」は実際にどのような植物を指すのかということを探るようになり、「花かつみ考」という書物が何冊も著され、真菰(まこも)、デンジソウ、あやめ(ノハナショウブ、花菖蒲)など、数種類の植物が「花かつみ」であると論証されたそうです。
花かつみと結び付けられてきた植物は4つあるみたいです。

花かつみは真菰(まこも)説

真菰(まこも)中でも有力説は「花かつみは真菰(まこも)説」で、江戸時代の歌学者の間では、「花かつみ」が眞菰(まこも)であるという事は、全く疑う余地もない事実だったそうです。
因みに、今回ご紹介している勝見文(かつみもん)は眞菰(まこも)という前提でお話しております。

花かつみは野花菖蒲(のはなしょうぶ)説

野花菖蒲(のはなしょうぶ)「花かつみ野花菖蒲(のはなしょうぶ)説」も支持されていたようです。
その理由は、「花かつみ」は花菖蒲の古名称の一つだったみたいだからです。
例えば、愛知県の知多郡阿久比町では、家康生母の於大(おだい)所縁の花でもある「花かつみ」のノハナショウブ/野花菖蒲(のはなしょうぶ)を、同町にある「花かつみ園」に保存栽培している点が挙げられます。
また、菖翁(しょうおう)も著書「花菖培養録(かしょうばいようろく)」の中で、安積の沼の花かつみを取り寄せたことや、花菖蒲と「花かつみ」はどちらが本名なのかということを書き記しているようです。
また「花かつみ」は安積沼に生える野花菖蒲(のはなしょうぶ)の事であると論証した「花かつみ考」も存在するようです。

菖翁(しょうおう)とは、江戸後期の徳川将軍家に直接仕える幕臣、旗本(はたもと)で花菖蒲(しょうおうか)の品種改良に生涯を捧げた園芸家の顔も持つ「松平定朝(まつだいら さだとも)」を指します。
菖翁は花菖蒲(はなしょうぶ)を愛し、 菖翁が生み出した品種は数百種類に及ぶと言われていますが、現存するのは約20種程度だそうです。

花かつみは姫射干/姫著莪(ひめしゃが)説

姫射干-姫著莪(ひめしゃが)更に、「花かつみ姫射干/姫著莪(ひめしゃが)説」もあります。
現在郡山市では、「おくのほそ道」の一節から「花かつみ」を市の花に定め、姫射干/姫著莪(ひめしゃが)をそれにあてているようです。
これは天保十二年の「相生集(あいおいしゆう)」に、「花の色はさながら菖蒲の如し。葉ははやく繁りて其末四面に垂れ、尋常のあやめなどの生たる姿には似つかず。」とある事や、明治九年の天皇の東北巡幸の際に、姫射干/姫著莪(ひめしゃが)を「花かつみ」であるとして天覧に供したことからのようです。

花かつみは田字草(でんじそう)説

田字草(でんじそう)「花かつみ田字草(でんじそう)説」があるそうです。
「万葉集」「枕草子」には、「花かつみ」の異名として田字草(でんじそう)が登場するとかしないとかあるようです。

花かつみは片喰(かたばみ)説

片喰(かたばみ)「花かつみ片喰(かたばみ)説」もあるそうです。

と、このように「花かつみ」とは幻の花で、現在でもどの種類の花なのかは不明のままだそうです。

なんだか、ロマンチックですね。

 



勝見文(かつみもん)について

勝見文(かつみもん)については、本当に不明点が多く、今回の勝見(かつみ)は、別名「花かつみ」、眞菰(まこも)の古名という観点からお伝えしておりましたが、ここ家紋については、少し異なるかと思います。。。

ここで紹介するのも少し違うかもですが、参考までに。

花勝見紋(はなかつみもん)

花勝見-Katsumimon家紋:花勝見紋(はなかつみもん)
参考:家紋のいろは

花勝見紋(はなかつみもん)は、歌舞伎役者の坂東三津五郎さんの紋でも有名です。

 



勝見文(かつみもん)が使用されたデザイン

勝見(かつみ)や勝見文(かつみもん)が使用されたデザインを図案、浮世絵でご紹介致します。
勝見襷・藻勝見(もかつみ・かつみたすき)
水草「真菰(まこも)」が繁茂した様子を象ったもので、平安時代の絵巻物には袍(ほう/朝服の上衣のひとつ)の文様として藻勝見(もかつみ)がよく見られるようです。

月岡芳年 「祇園まち」

月岡芳年 「祇園まち」
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※2024/07/12(金)更新※



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