【解説】酢漿草文(かたばみもん)とは?日本伝統文様にある酢漿草(かたばみ)を徹底解剖!

酢漿草/片喰/カタバミ-タイトル trivia
酢漿草文 – かたばみもん –

酢漿草(かたばみ)は、カタバミ科の多年草で各地の庭や道端に生えている日常的で身近な植物です。均整のとれた葉の曲線は美しく、文様化され紋章となり、旗指物の類につけたり、衣類の文様に使用されてきました。家紋には花や実を付けたものや、引両、千鳥、生竹とのコラボレーションの柄があります。

そんな身近に輝いている美しい酢漿草文(かたばみもん)をご紹介致します!

 

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酢漿草(かたばみ)とは?

katabami酢漿草(かたばみ)は、カタバミ科の多年草です。
根は肥えて厚くなり、そこから地上に多くの走出枝(そうしゅつし)を出し、上部は斜上して長さ10~30㎝になります。小枝が多く、地に接する茎から更に細い根を出すことがあります。
葉は根生し、また茎上では互生して、長柄の先にクローバーに似た3枚の小葉をつけます。
小葉は幅約1㎝の扁倒卵形(へんとうらんけい)で先端がへこみ、裏と縁(へり)に毛があり、昼は開き夜になると裏を外側にして二つに閉じます。
普通の葉は緑色ですが、紅紫色や緑紫色、白色のものもあります。
花期は6~9月頃です。
花序の軸は直立茎の上に腋生(えきせい)し、ほぼ散形に1~8個の花を下向きにつけます。
花は黄色や紫色など、径約8~10㎜程で、萼片(がくへん)は5枚、花弁は5枚です。雄しべは10本、子房は上位で5本の花柱があります。蒴果(さくか)は円柱形で長さ2~2.5㎝です。
細かい毛が生えており、熟すと5裂して暗褐色の種子を多数はじき出します。種子は広卵形(こうらんけい)で横じわがあります。
日本にやってきたのは江戸時代末期で、園芸植物として親しまれていたようです。北海道から南西諸島、小笠原(おがさわら)に生育し、世界の暖温帯に広く分布しています。
全体にシュウ酸を含み、酸味が強いので「酢漿草」とも書き、別名は「スイモノグサ」で料理に利用される事もあります。中国やインドでは薬用に使用しており、植物体のしぼり汁はグラム陽性菌に対する殺菌作用(寄生性の皮膚病)があることが知られています。更に解毒や炎症を抑えたり、下痢止めとしても使われたりしたようです。
katabamiまた、酢漿草(かたばみ)は、沢山の別名が付けられています。
葉や茎で硬貨を磨くと綺麗になることから「銭磨き(ぜにみがき)」、仏具や真鍮の鏡を磨くために用いられたことから「鏡草(かがみぐさ)」と、小さい葉が夜になると袴をたたんだように葉が閉じることから「雀の袴(すずめのはかま)」とも呼ばれます。
葉形が美しいので家紋(酢漿草紋)として用いられてきました。
更に観賞用には「オキザリス」の名で、熱帯アメリカ、アフリカ原産のものが十数種栽培されています。
因みに「オキザリス」とは、園芸上でカタバミ属のなかでも球根のある品種群のことをいいます。

酢漿草(かたばみ)の学名は Oxalis corniculata で、英名は Yellow sorrel です。
漢字では「片喰」や「傍食」、「鳩酢草」とも書き表せます。

酢漿草(かたばみ)の意味

katabami酢漿草(かたばみ)には、キリスト教にまつわる花言葉がいくつかつけられています。

喜び

「喜び」という花言葉は、キリスト教に由来があります。ヨーロッパでは、キリストの復活祭の時期に「ハレルヤ」(キリスト教の「主を褒め称えよ」の意)と唱える習慣があるのだとか。
キリストの復活祭の時期にちょうど「カタバミ」の花が咲き誇ることから、西洋では別名「ハレルヤ」という名が付けられているそうです。キリストの復活に由来のある喜ばしい日に咲くことから酢漿草(かたばみ)には、「喜び」という花言葉がつけられたようです。

輝く心

酢漿草(かたばみ)は、古くから仏具や真鍮の鏡を磨くために用いられてきたことから、別名「鏡草」とも呼ばれます。このことから、「輝く心」という花言葉がつけられたそうです。

母の優しさ

酢漿草(かたばみ)やクローバーなどの葉が3枚に分かれている植物は、ヨーロッパでは「シャムロック」と呼ばれ、キリスト教では三位一体の教えと結びつけて考えられています。「母の優しさ」は、イエスへの聖母マリアの優しさを表しているのかもしれませんね。

あなたと共に

酢漿草(かたばみ)には、「あなたと共に」というロマンチックな花言葉もあります。詳しい由来は定かではありませんが、先述したイエス・キリストと共に生きる、という思想が元になっているという説も。また、酢漿草(かたばみ)は強い繁殖力を持ち、簡単に離れることがないことから名づけられたという説もあります。

 



酢漿草文/片喰文(かたばみもん)について

酢漿草(かたばみ)は、その優雅な形状からか古来から人気があり、文様としては平安、鎌倉時代から車や輿に多く用いられていました。酢漿草(かたばみ)は荒地や畑に群生する繁殖力の強い雑草の一種で、一度根付くと断ち切ることが難しいことから、「家が絶えない」ことに通じ、子孫繁栄、世襲を意味するとも云われています。

酢漿草文/片喰紋(かたばみもん)はその力強い生命を感じさせられる点から、多くの武家に愛用されました。

酢漿草文/片喰紋(かたばみもん)は、日本十大紋の一つで桐紋についで広く愛用されております。酢漿草(かたばみ)は西洋の花言葉では「賢い婦人」といいます。ハート形故に女性に好まれたのでしょうね。

古くは新田氏、長宗我部氏、徳川時代には松平氏、酒井氏、森川氏など多家で使用されました。また公家では冷泉家、入江家、花山院家などが用いたそうです。

特に有名なのは、土佐長宗我部家で「(丸に)七つ酢漿草(ななつかたばみ)」を家紋として用いていたようです。

では、いくつか代表的な酢漿草文(かたばみもん)をいくつかご紹介します。

丸に酢漿草/丸に片喰(まるにかたばみ)

丸に片喰家紋:丸に酢漿草/丸に片喰(まるにかたばみ)
参考:家紋のいろは

丸に酢漿草/丸に片喰紋(まるにかたばみもん)は、とてもシンプルですが、酢漿草(かたばみ)を描いて、その周りを通常の太さの円で囲う紋です。

剣酢漿草/剣片喰(けんかたばみ)

剣片喰

家紋:剣酢漿草/剣片喰(けんかたばみ)
参考:家紋のいろは

剣酢漿草/剣片喰紋(けんかたばみもん)は、ハートの形の3つの葉を三方向に広げて描いて、それぞれの間に剣を伸ばして描く紋です。通常の酢漿草/片喰紋とは上下が逆になっており、剣が上にくるように配置します。

丸に剣酢漿草/丸に剣片喰(まるにけんかたばみ)

丸に剣片喰

家紋:丸に剣酢漿草/丸に剣片喰(まるにけんかたばみ)
参考:家紋のいろは

丸に剣酢漿草/丸に剣片喰紋(まるにけんかたばみもん)は、剣酢漿草/剣片喰紋(けんかたばみもん)を描いて、その周りを通常の太さの円で囲う紋です。丸に剣酢漿草/丸に剣片喰(まるにけんかたばみ)は、酢漿草/片喰紋の中では最も多く使用されている家紋で全国いたる所に分布しているようです。

石持ち地抜き剣酢漿草/石持ち地抜き剣片喰(こくもちじぬきけんかたばみ)

石持ち地抜き剣片喰

家紋:石持ち地抜き剣酢漿草/石持ち地抜き剣片喰(こくもちじぬきけんかたばみ)
参考:家紋のいろは

石持ち地抜き剣酢漿草/石持ち地抜き剣片喰紋(こくもちじぬきけんかたばみもん)は、地と反対色の円を描き、色を抜くように剣酢漿草/剣片喰(けんかたばみ)を描く紋です。

(丸に)七つ酢漿草/(丸に)七つ片喰(まるにななつかたばみ)

丸に七つ片喰

家紋:丸に七つ酢漿草/丸に七つ片喰(まるにななつかたばみ)
参考:家紋のいろは

円の中央に酢漿草/片喰(かたばみ)が1つ、その中心を囲むようにして6つの酢漿草/片喰が描かれている紋です。四国の戦国大名長宗我部氏の家紋です。因みに、この郷士(ごうし)の子孫には幕末の土佐藩志士坂本龍馬などがいるようです。

 



酢漿草文/片喰文(かたばみもん)が使用されたデザイン

酢漿草文/片喰文(かたばみもん)が使用されたデザインを浮世絵でご紹介致します。

東洲斎写楽 「八世森田勘弥の由良兵庫之介信忠」
東洲斎写楽 「八世森田勘弥の由良兵庫之介信忠」
パブリックドメインQ:著作権フリー画像素材集

水野年方 「三井好 都のにしき ゆふすゞみ」 (1906)
水野年方 「三井好 都のにしき ゆふすゞみ」 (1906)
パブリックドメインQ:著作権フリー画像素材集

 

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※2024/05/03(金)更新※



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