【解説】梅文(うめもん)とは?日本伝統文様にある梅(うめ)を徹底解剖!

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梅文 – うめもん –

早春に芳しい香りをはなって咲く梅のその高潔さは、常緑の松、雪に堪える竹とともに「歳寒三友(さいかんのさんゆう)」と呼ばれ、縁起を重んじる日本人に昔から好まれてきました。

梅という字は「木偏」と「毎」からなっています。
「毎」は象形文字で本来の意味は氏族社会の中で、子供を最も多く産み育てた母親のことです。
梅が実をつける時、必ず各枝全てに実をつけている姿がまるで子だくさんの母のようだと思い、人々は梅を【めでたい樹木】と考えたようです。

そんな梅(うめ)を文様化した、梅文(うめもん)をご紹介致します!

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梅(うめ)とは?

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梅(うめ)はバラ科のアンズ属、サクラ属の中国原産の落葉高木で、諸説あるようですが朝鮮半島を経由して日本に渡ってきたと言われているようです。
正確な渡来時期はまだわかっていませんが、「万葉集」に歌が詠まれていることから、奈良時代にはすでに栽培されていたようです。
因みに、「万葉集」とは、天皇、貴族から下級官人、防人などさまざまな身分の人間が詠んだ歌が、4500首以上も集められている国最古の歌集です。
梅を詠んだ歌は萩に次いで多く、なんと118首もあるそうです。花と言えば「梅」を指していたほど、昔から日本で愛されてきた花だと言えますね。

梅(うめ)は大きく分けて「花梅」と「実梅」に分類されますが、この分類の境界は基本曖昧みたいです。
「花梅」は、花を観賞することを目的としして改良された品種で、花の色や香り、咲き方、樹形を楽しむものです。
「実梅」は、果実の収穫を楽しむことを目的とされる品種を指しますが、実梅も香りの良い観賞価値のある花を咲かせてくれます。
どちらも素敵なお花が楽しめるみたいですが、簡単に言えば、観賞用か食用かで分けられているみたいです。

菅原道真が梅(うめ)をこよなく愛していたのは有名なお話ですよね。このエピソードについては後程お話いたします。
しかし、菅原道真公だけではなく梅(うめ)は日本を代表してきた先人たちからも愛されてきているのです。

梅と豊臣秀吉と千利休のとある逸話があるようです。
ある春のこと、豊臣秀吉が床の間に置いた水を張った大きな鉢の傍に、紅梅の一枝だけを添え、千利休に「この鉢に、この梅を入れてみよ」と命じました。側近たちが「これは難題だ」とハラハラして見守っている中、利休は平然と紅梅の枝を手に取るや否や、紅梅の花と蕾だけをさらりと鉢に入れたのです。水面に浮かんだ紅梅の花の風情に、豊臣秀吉は上機嫌になったといいます。

さらに梅と徳川家康の逸話もあるようです。
徳川家康が晩年を過ごした駿府城(すんぷじょう)には美しい梅の木がありました。熟すと種が二つに割れる大変珍しい木で、実割梅と呼ばれていました。当時、駿府城(すんぷじょう)ではこの実割梅から梅干を漬け、東照宮に納めるしきたりだったようです。この木は、徳川家康公が自ら植えたものと言われており、木はその後、駿府城(すんぷじょう)から東照宮の境内、唐門下に移植されました。

このように有名貴族や武将たちからも愛される梅は、日本の心を代表する花の1つだと言っても過言ではありませんね。

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先ほど梅と徳川家康の逸話にも出てきた「梅干(うめぼし)」について。

梅干(うめぼし)とは梅の果実を塩漬けにした後に乾燥させ、シソの葉と一緒に梅酢に漬け込んだものです。
色はシソの葉より着色された赤診色で、柔らかい大粒のものからカリカリとした小粒ものまで種類は様々です。
味は塩味があり酸っぱく、種類によってはハチミツなどが入った万人に食べやすい梅干(うめぼし)もあり、ご飯のお供として日本の食卓に多く登場します。
特に紀州(和歌山県)の梅干は全国的に有名です。

平安時代に医家の丹波康頼(たんば の やすより)が著した日本最古の医学書「医心方(いしんぽう)」の「食養編」に梅干(うめぼし)が登場するそうです。
「味は酸、平、無毒。気を下し、熱と煩懣(はんまん)を除き、心臓を鎮め、四肢身体の痛みや手足の麻痺なども治し、皮膚のあれ、萎縮を治すのに用いられる。下痢を止め、口の渇きを止める」と記述されており、昔の日本人の間では梅干(うめぼし)が薬用として用いられていたことが解りますね。
また、後の江戸時代の図説百科事典「和漢三才図会(わかんさんさいずえ)」にも梅は記載されているようです。
江戸末期、諸外国からの来訪者が増えたことで疫病が大流行し、1800年頃には全国で2回、コレラが流行しました。このときに梅干(うめぼし)が大活躍したみたいです。
コレラ菌が有機酸に弱い菌であることは知られていませんでしたが、当時の人々は体験から、梅干(梅うめぼし)には強い殺菌力あることが知っており、治療に役立てていたようです。
その後、明治8年のコレラ流行の時にも梅干(うめぼし)が活躍したようです。
そんな医療に大変活躍してきた梅干(うめぼし)ですが実は、現在でも「赤本」という医学書に乗っているほどその効能が注目されています。
赤本とは、大正14年(1925年)の初版刊行以来、現在まで版を重ねる家庭医学書です。
なんと総発行部数1000万部を超える、大ベストセラーです。
その赤本に梅肉エキスの効能が記載されています。多くの健康法が出現し、流行し、また忘れられていった中、今でも読み継がれ、梅の活用が記されているようです。

梅干(うめぼし)は医学だけにとどまらず、室町時代では、梅干(うめぼし)は食欲亢進剤として、武士の間で用いられるようになりました。
戦国時代になっても、梅干(うめぼし)はまだ食品ではなく薬でした。
梅(うめ)は武士の時代、戦国時代の戦の際に食べられた野戦糧食の一つだったようです。
栄養を手早く摂取でき携帯しやすいことや、保存性、手に入りやすさや作りやすさなどが重宝されたのです。
これが、梅の木が全国に広がったきっかけと言われているようで名所が各地にあります。

梅干(うめぼし)は日本人にとっての医療・健康食品のようですね。
ただ取りすぎには注意です!塩分の取りすぎになってしまう可能性がありますよ~。




梅文(うめもん)について

厳しい寒さの中、いち早く花を咲かせ、実をたくさん付ける梅。

梅文(うめもん)は、忍耐力や生命力、子孫繁栄の象徴とされ、新春を代表する吉祥文様です。
その種類も多く、真っすぐの枝に花を付けた「槍梅」、花びらをねじった「ねじり梅」、梅花を正面から見た形を図案化した「梅鉢」などが代表的。

yae-mukou-ume家紋:八重向こう梅(やえむこううめ)
参考:フリー素材サイト発光大王堂
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家紋:梅鉢(うめばち)
参考:フリー素材サイト発光大王堂

梅花文には、蕊(しべ)のある「向こう梅」と「横見梅」、蕊(しべ)のない「表梅」「裏梅」「光琳梅」などがあります。

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家紋:光琳梅(こうりんばい)
参考:フリー素材サイト発光大王堂

他には「八重」「捻じ」など多彩に梅文はあります。

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家紋:重ね梅(かさねうめ)
参考:フリー素材サイト発光大王堂

梅鉢文には軸のある「剣梅鉢」や軸のない「星梅鉢」や「裏梅鉢」などがあります。

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家紋:剣梅鉢(けんうめばち)
参考:家紋のいろは

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家紋:裏梅(うらうめ)
参考:家紋のいろは

梅文は愛された数だけ文様のデザインの数がありますね。

梅への愛はこれだけではとどまりません。
梅文(うめもん)で思い浮かぶのが天満宮(まんてんぐう)の神紋(社紋)です。
天満宮(てんまんぐう)とは、天神さま(菅原道真公)をお祀りする全国約12,000社ほどあります。
その総本宮は太宰府天満宮(だざいふてんまんぐう)で、「学問・至誠(しせい)・厄除けの神様」として、ご崇敬を集めているそうです。
梅をこよなく愛していた菅原道真は、死後、都に起きた天変地異を鎮めるために天満天神として祭られました。
その後は天満宮(てんまんぐう)の境内にも梅の木が多く植えられ、春先には梅祭りなども行なわれています。

菅原道真の有名な句
「東風吹かば 匂ひおこせよ梅の花 主なしとて 春を忘るな」
読み:こちふかば にほひおこせよ うめのはな あるじなしとて はるなわすれそ
訳:我梅の花よ。東風が吹いたら、我(菅原道真)のいる大宰府まで匂いを届けておくれ。主人(菅原道真)がいないからと言って、春を忘れてはならないよ。

この和歌は、菅原道真が濡れ衣を着せられ太宰府へ左遷される前に、愛していた梅の木を前にして語り掛けるように詠んだ菅原道真の句です。

どれほど菅原道真が、梅を愛しておられたか。明確に解る和歌だと思います。
梅は昔から日本人を魅了し愛されてきた美しい花木だと断定できましたね^^




梅文(うめもん)が使用されたデザイン

水野年方 「三十六佳撰 初音 万治頃婦人」 (1893)水野年方 「三十六佳撰 初音 万治頃婦人」 (1893)
参考:パブリックドメインQ:著作権フリー画像素材集

楊洲周延 「二十四孝見立画合 第四号 閔子騫」 (1890)楊洲周延 「二十四孝見立画合 第四号 閔子騫」 (1890)
参考:パブリックドメインQ:著作権フリー画像素材集

 

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※2022/1/22(土)更新※



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