椿(つばき)は、日本書記や古事記にも登場する日本が原産でツバキ科の常緑高木です。
茶道を確立した千利休が、椿を茶花(ちゃばな)にしたり、江戸時代の将軍・徳川秀忠も椿をこよなく愛し、江戸城の中に椿園をつくったりと、さまざまな人物を虜にしてきた樹木です。
歴史は古く5000年前の縄文時代から椿油などが既に使用されていたようです。
冬に葉を落さないのは魔力を持つためと信じられ、神聖な木とされていたようです。枝や葉を焼いた灰や煙に、災いや悪霊を祓う呪力があるされています。修験者が行脚の際に、仏具や日常品を入れた笈(おい)には椿の文様が彫られています。
文様は花、葉、枝などを図案化したもので、桃山時代の辻が花染め、江戸時代には能服束や友禅染の小袖に用いられています。
そんな昔から身近で神聖な椿文(つばきもん)をご紹介致します!
椿(つばき)とは?
椿(つばき)は、ツバキ科ツバキ属の常緑高木で、光沢のある濃い緑の葉をもちます。一般的な開花時期は、冬から春にかけての12月〜4月頃です。
椿(つばき)の花は赤色が主ですが、種類によっては白色やピンク色などもあります。枝先に一輪ずつ咲き、光沢のある厚い葉が特徴です。
種子からは、天然の植物性油「椿油」が採れます。椿油に含まれるオレイン酸には保湿力があり、美容効果が高いことから、さまざまな化粧品にも用いられています。
椿(つばき)の名前の由来
椿(つばき)は、英名は「Camellia」、学名は「Camellia japonica」です。
その学名のとおり日本が原産で、日本を代表する樹木のひとつです。
椿(つばき)とは、ツバキ科の樹木の総称ですが、一般的に椿(つばき)というと、「藪椿(やぶつばき)」のことを指す様です。
名前の由来には諸説があり、厚みのある葉の意味で「厚葉木(あつばき)」、艶やかな葉の「艶葉木(つやばき)」、光沢のある葉の「光沢木(つやき)」、また光沢がある様子をあらわす古語「つば」に由来し、「つばの木」、そのほか、常緑で丈夫であることから「強葉木(つよばき)」という説もあります。この他にもまだあるようです。それだけ愛されていたという事でしょうね。
椿(つばき)の季語
椿(つばき)は、「春(三春)の季語」としても用いられています。
三春とは、陰暦の1月である「初春」、2月の「仲春」、3月の「晩春」のことをさします。
更に、椿(つばき)が季語に使われる際には、主に2つの意味合いがあります。
1つ目は、椿(つばき)が花を落とす時に、首から丸ごと落ちる様子から「悲しさ」や「儚さ」を表現するもの。
2つ目は、寒い冬の中でも花を咲かせる様子から「孤高」、「気高さ」を表現する使い方です。
椿(つばき)の意味
椿(つばき)は、縁起が良いとされる説と悪い説がありますが、その両方の説を紹介します。
寒さが厳しい冬の中でも凛として咲き誇るその様子から、椿(つばき)は「忍耐」や「生命力」の象徴とされ、縁起の良い花とされています。また、邪気を祓う力があるとされ、「神聖な木」として、大事にされてきた樹木でもあります。
一方、咲き終えた椿(つばき)は花びらが散るのではなく、花ごと落ちるのが特徴です。首からポトリと落ちる様子から、「首から落ちるから不吉」と、江戸時代の武士からは嫌われていたといわれています。
そのため、別名で「首切り花」と呼ばれ、今でも病気療養中の人へのお見舞いや仏壇へのお供え物、還暦祝い、祖父・祖母の誕生日祝いなど、「ゲン担ぎ」を想定したプレゼントには避けるのがベターです。日本人の心をくすぐる椿(つばき)ですが、プレゼントには注意が必要ですね。
色別での椿の花言葉
更にカラー別で花言葉が違います。
赤い椿
赤い椿(つばき)の花言葉は「控えめなすばらしさ」「気取らない優美さ」「謙虚な美徳」です。
ピンクの椿
ピンクの椿(つばき)の花言葉は「控えめな美」「控えめな愛」「慎み深い」です。
白の椿
白い椿(つばき)の花言葉は「完全なる美しさ」「申し分のない魅力」「至上の愛らしさ」です。
椿の怖い意味
椿(つばき)には「罪を犯す女」という花言葉もついています。
江戸末期には海外でも椿(つばき)が人気を集め、椿(つばき)をタイトルにした「椿姫」という小説がフランスで出版されました。オペラでもとても有名な演目となっています。
この「椿姫」に登場する美しい椿の花が好きな高級娼婦マルグリット、通称「椿姫」と、青年アルマンの恋物語が怖い花言葉の由来です。
愛し合う二人なのに、娼婦だったという過去のせいでアルマンの父親から猛反対を受けます。それ故愛する人のために別れを選ぶしかなかったマルグリットは、寂しい思いを抱えながらも覚悟を決めて、青年アルマンの元を離れ娼婦に戻ります。以前から患っていた肺の病(結核)により彼女がひっそりとこの世を去ったとき、青年アルマンはマルグリットが離れた理由を知るといった物語です。
その身分違いの恋から「罪を犯す女」と呼ばれ、「椿姫」の椿(つばき)から「罪を犯す女」という花言葉がついたといわれています。
愛する人のために身を引いた、その切ない優しさ、潔い心は美しいものなので、実際の由来を聞くと特段怖い意味ではないようにも思います。
椿文(つばきもん)について
椿(つばき)は、「古事記」にも登場する日本原産の常緑樹で、呪力を持つ神聖な木とされてきました。
茶道の世界でも「茶花の女王」として重用されたましたが、花が丸ごと落ちる様子が首が落ちると連想されたため武家には敬遠されたようです。家紋としては希少で、名字にちなむ家紋でもあります。
椿紋(つばきもん)は、日本橋水天宮の神紋であり、椿油の産地の伊豆大島では住民が椿紋を用いているそうです。
更に、江戸時代に日本で最初に医学的な解剖を行ったことで有名な「山脇東洋」が出た山脇氏の紋としても知られています。
では、いくつか代表的な椿紋(つばきもん)をいくつかご紹介します。
三つ椿(みつつばき)
家紋:三つ椿(みつつばき)
三つ椿紋(みつつばきもん)は、椿の花を3つ囲うように並べた紋です。
千葉椿(ちばつばき)
家紋:千葉椿(ちばつばき)
参考:家紋のいろは
千葉椿紋(ちばつばき)は、14枚の花弁に矢印型の模様をつけ中心に円筒形のシベを立てる紋です。
江戸時代に日本で最初に医学的な解剖を行ったことで有名な「山脇東洋」が出た山脇氏の紋でもあります。
水天宮椿(すいてんぐうつばき)
家紋:水天宮椿(すいてんぐうつばき)
参考:家紋のいろは
水天宮椿紋(すいてんぐうつばきもん)は、横から見た5枚の花弁の椿の花に5枚の葉を描いた水天宮の御神紋です。安徳天皇と玉江姫の恋物語の由縁から椿の花が御神紋となったようです。
一つ椿(ひとつばき)
家紋:一つ椿(ひとつばき)
参考:家紋のいろは
一つ椿紋(ひとつばきもん)は、横から見た椿の花と1枚の葉を描く紋です。
椿文(つばきもん)が使用されたデザイン
椿(つばき)や椿文(つばきもん)が使用されたデザインを浮世絵でご紹介致します。
楊洲周延 「二十四孝見立画合 第二十一号 田真田広田慶」 (1890)
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水野年方 「三十六佳撰 琴しらべ 弘化頃名古屋婦人」 (1893)
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山本昇雲 「子供風俗画帖 子供あそび 大決戦」 (1906)
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